Overleaf を試しに使ってみた

ある人が LaTeX エディターに Overleaf を使っていたのを見たので,便利なのかを確かめるために試しに使ってみた.

Overleaf とは?

Overleaf は,ブラウザ上で LaTeX の執筆をすることができるオンライン共同LaTeXエディターである.

Overleaf, オンラインLaTeXエディター https://ja.overleaf.com/

LaTeX の環境を整えるのはとにかくめんどくさいものであるが,これではそのような手間なしにブラウザから簡単に LaTeX を用いた執筆が行えるようになる.
やろうと思えばスマホからも執筆できるらしい.(やりたくはないし試さなかったが)

同様のサービスにCloudLaTeXというものもある.

導入

まず,上記の Overleaf のページにアクセスする.

「今すぐ開始」で会員登録(Googleのアカウントでの登録も可能)をすればよい.

「新規プロジェクト」>「空のプロジェクト」で新しいプロジェクト名を入力して「作成」を押せば,テンプレートのみの書かれた main.tex のみのプロジェクトが新たに作成される.

ここまで来たらもういけそうな雰囲気があるが,しかしこのままでは pLaTeX に対応しておらず,日本語が打てない.
そこで,やや環境設定をする必要がある.

FileTree (左端) の左上に新規ファイルのアイコンがある.
ここから,新規ファイル「latexmkrc」を作成する.拡張子は不要.

latexmkrc 内に以下を記述する.

$latex = 'platex';
$bibtex = 'pbibtex';
$dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S';
$makeindex = 'mendex %O -o %D %S';
$pdf_mode = 3; 

最後に,左上のメニューからコンパイラを LaTeX に変更する.これで,texファイルのコンパイルが可能になる.

これだけ.TeX Live をコンピュータに入れて環境構築をしたときに比べれば,面白いくらい簡単である.

色々試してみた

という訳で,試しに色々見てみて,何ができるのかを確認してみた.

bibファイル・styファイル等の使用,画像の挿入

自分はテンプレートに styファイル,clsファイル,bitファイルを使用しているが,プロジェクト内にファイルをアップロードすることで問題なく動作した.bibファイルも問題なく動作した.

画像も,画像用フォルダをプロジェクトに配置しその中に画像ファイルを入れて問題なく動作した.

コンパイル

コンパイル(タイプセット)は,Ctrl+Enter ないしは「再編集」をクリックすることでできる.

当たり前だけど,オンラインなのでコンパイルのスピードはちょっと遅いなという印象.

なお,「再編集」の右にある▼から Auto Compile を On にできる.
これによって,ソースを編集するたびに自動でコンパイルされる.

共同編集

Overleaf でできるプロジェクトの共有にはいくつかの方法がある.
いずれも右上のメニューの共有からできる.

まず,Link sharing を用いる方法.これは無料版でも可能な方法だ.

 「Turn on link sharing」をクリックすることでこれは有効になり,URLによって共有が可能になる.

共有URLは編集可能となるURLと閲覧のみ可能のURLの2つが示され,使い分けができる.

ただし,これはURLを知る人ならば誰でも編集ないしは閲覧が可能となるため,セキュリティ上不安が残る.

次に共同編集者を招待する方法.これは有料版のみの機能だ.

共同編集者のプランで1プロジェクト当たり10人,プロフェッショナルのプランで制限なく招待できるようになる.

この機能を使えば,招待したメールアドレスのみが編集/閲覧可能になり,安心して共有を行うことが出来る.

共同編集において便利そうな機能として,Review機能とチャット機能がある.

Review機能では,ソースの各部に対してコメントをすることが出来る.
また,コメントに対し返信もできる.

チャット機能は,プロジェクト全体でのチャットである.改行なし(?)のテキストのみ送信可能である.

Rich Text

なんと,Rich Text 形式の入力でコマンドを打ち込まないでも,一部Wordのように入力することが出来る.

特に数式モードにおいて Ctrl+B で \textbf{} が自動で挿入されたのには感動した.

その他機能

あまり触っていないが,履歴機能で過去のバージョンを掘り起こしたり,変更箇所を見ることが可能そうな感じである.
ただし,全てのドキュメント履歴は有料機能なので無料は制限がどこかである模様.

また,有料版ならば,Dropbox や GitHub との連携が可能なようだ.これも使えればなかなか便利そうだ.

最後に作成されたファイルのダウンロードだが,これは勿論有料版無料版共に可能である.
作成されたPDFファイルのダウンロードと,プロジェクトをまるごとzip形式でのダウンロードが可能である.

感想

有料版ならば便利な機能が揃っていてとても使い勝手が良さそうである.

ただ,そこまで自分は常に TeX での組版をしまくる訳ではないので,このために料金を払うのには抵抗がある.

組織が料金を払ってくれるのであれば,共同編集において魅力的な機能が多くあるので是非使ってみたいと思うところである.

無料版は機能が限られており,個人的にやる分にはいいかもしれない,といった感想である.

やはり,ブラウザさえ入っていればあらゆるデバイスで作業ができるのは大きい.

ただ,自分は今,普段使いでコードを書くようなデバイスには全て自分好みの TeX環境を構築してしまっているので,わざわざこちらを使おうとは思えなかった.

参考文献